『阪急電車』−電車内の出会い


18日から読み始めた『阪急電車』、昨夜のうちに一気に読んでしまった。本は通勤中にちみちみ読む!という主義なのだが、なんとなく夜に寝られなかったので・・・。



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最初、読み始めた時にちょっと違和感があって、それは会話に関西弁がなかったことだった。なんでかなあと思っていたら、そのうち、生きのいいコテコテの会話があらわれる。そうしてはじめて、あそうだ、周囲にも関西弁を使わない関西人がいるなあと思い当たる。そういう、話し言葉の違いによる雰囲気ってあるよなあ、それを、有川氏は表現しているのかなあと思う。


ほんと、短編がうまく組み合わされていて、いっかい降りた人がまた乗り合わせたり、気づかないうちに、そういうことが自分の周囲にも起こっているのかもしれない。まあ、この本みたいに、人生をかえるようなやりとりってのは、たとえ知らない人にも話しかける文化をもつ大阪にしたって、そんなに無いような気がする。


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私自身の体験に照らせば、その多くが話しかけられて助かったケースだ。気づかずに落とした折りたたみ傘の袋を、わざわざ走って追いかけてきて届けてくれた人、そっと背後に近づき、「クリーニングのタグついてますよ」とささやいて去っていったおばちゃん(これはもうほんまにほんまに助かった!!!)。だから、私もなるべく、その恩を他の人に返していきたいと心がけている。でも、いつも、じゃなくて、時間があるときとか、心に余裕があるときとか、疲れていない時に限るのだが・・・。


その中で一番勇気がいったことは、ある夜、車内に酔っぱらったおっさんがドアにもたれて寝ていたのを見かけた時だった。しばらくは反対側のドアが開くが、あと何駅かすると、おっさんのよっかかっているドアがあいてしまう。そしたら、おっさんはしたたかに後頭部をホームに打ちつけ、ヘタするとそこで臨終となるかもしれない。ひきずるのは体格的にムリだから、おっさんの頭の向きをなんとか変え、人のいない座席の方にもたせかけた。おっさんは薄めを開けた気もするが、なんの反応もなかった。周りの人はただ私のしていることをちらちらとみている。


おっさん側のドアが開いた。乗り込んだ人はおっさんの足をまたいで乗り込む。いちおう、後頭部強打は避けられたのを見届けると、私は数駅先で下車したのだった。


で、たとえばグループのおばさんたちが乗ってきたとき、もし自分が長い座席の真ん中へんに座っていたら、さりげなく席を移動するくらいのことだったら、そこまでの勇気はなくてもできる。別に「どうぞ」とも言わずに席を立つんだけど、人によっては「あらすみません」くらいは言ってくれる。私も、そういうおばちゃんに「タグついてますよ」、と、過去か将来、言ってもらった&教えてもらうかもしれないし。


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とまあ、この本を読みながらそんなことを考えたわけだが、でも、全体的に楽しい読書だった。つい一気読みしちゃったのも、やはり、この物語に読者を引き込む力があるからかもしれない。


まあ、先に映画の宣伝(映画そのものではない)を見ちゃったから、登場人物が中谷美紀とか戸田恵梨香の顔になっちゃうのは仕方ないけど、でも、映画を見た人がロケ地になった駅に降りたり見にきたり、いろんな思いを馳せたりしながら乗るのかなあと思うと、ちょこちょこ乗っているこの電車をとても身近に感じられるような気がする。