『国鉄スワローズ1950-1964 400勝投手と愛すべき万年Bクラス球団』

↓には題名しかないけど、やはり副題がないと、って感じ。2011年現在いまだに首位をキープしているので、もう「万年Bクラス」とは言えないと思うけど、「ヤクルト」じゃなくて「国鉄」だからいいのかな?




桑原征平がよくネタにしている、ヤクルトのオーナーか誰か偉いヒトが「巨人には勝たんでもええし」とかなんとか言うたというエピソード、そういう時代をつぶさに描いているこの本。しかしまあ、もしヤクルト時代の若き日の藤井秀悟がそんなこと言われたら、悔しくて号泣するんじゃないかと・・・・。


さて、ヤクルトの前身が国鉄であることは知識では知っていたが、ではなぜ国鉄が球団を持つのか、ということがこの本をひもとくとよく分かる。国鉄が球団を持ついきさつが、プロ野球創生期の熱気とともに語られていて、たくさんの写真や当時の記事とともに、読んでいてわくわくしてくる。


また写真のなかには、広島カープがほんとうに市民球団なんだな、というような、市民がカンパしているものもあったし、ファンもからんだ乱闘もあり、と、当時野球を愛した市井の人々の、いかにも戦後すぐの世相を反映した奔放で血気盛んな様子もかいまみえる。また、荒縄とムシロで急造した記者席がすっぽ抜けて記者達が1メートル以上も落下、などという、マンガのようなこともあったらしい。



また、国鉄スワローズというチームは、弱いわりにはファンが多かったようで、しかもそのファンは国鉄エリート官僚じゃなくて、ほんと、ふつうの機関士さん、車掌さん、駅員さんとかそういう人々だったという。まさに、庶民の球団であった。ファン同様に、球団自体もかなりシブチンというか貧乏だったようで、「愛がない」と言われてペタに逃げられたヤクルトのカツカツぶりのルーツを見るようで、おもしろかった。