これからの「正義」の話をしよう
上記は、政治哲学についてのマイク・サンデルの本である。
人気があるというテレビ放送のことをからめ、
いぜん、朝日の社説でとりあげられたことがあって
ちょっと、興味をもったけど、それだけだった。
ただ、2010年7月21日付朝日新聞朝刊 私の視点 にある
宮崎哲弥氏の視点 サンデルの問い 現実を「私たち」から考える
を読んで、その政治哲学を戦争責任についての考えに及ぼしてみようという論には
ふと、考えさせられるものがあった。
氏によると、サンデルの『これからの「正義」の話をしよう』第9章に論及されている
ようなので、もし機会があったら、読んでみたい……といいつつ、
たぶん現実には実行に移されないであろうことを
自分をよく知る私はうっすらと予想する。
いまは、宮崎氏の論の一部を引用するにとどめたい。
***引用はじめ
(前略)
もし個人を共同体の歴史や伝統いから切り離されたところに自生する主体(「負荷なき自我」)とするならば、
生まれる前の戦争中に起こった自国軍、自国民による違法行為等を引責する根拠は希薄だ。
(中略)
しかし、私達(引用者注:ここに「わたくしたち」とルビが振られている)は真空に生まれ落ちるのではない。
共同世界の只中に生まれ、共同体から有形無形の資産を相続し、それらを養分として自我を形成していく。
その中には共同体が過去に背負った負の財産も含まれる。
その負債継承を前提として、さらに内容を吟味していくことこそが、政治道徳の陶冶の出発点である。
これがサンデルの結論であり、私の結論でもある。
(後略)
***引用おわり
南京での2年間は、多くの場合、できるだけそういう議論に近づかないことに徹した。
見知らぬ南京人の怒声も黙って聞き、戦争責任に真摯に向き合う日本の友達の話も黙って聞き、
また「私はぜったい謝らない」と、その理由もはっきり述べて宣言した他の日本の友達の話も
黙って聞いていた。自分自身ではあまり考えないようにしていた。
いまでも考えるのが恐い。
これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
- 作者: マイケル・サンデル,Michael J. Sandel,鬼澤忍
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/05/22
- メディア: 単行本
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