お気に入り短歌

この日付の朝日新聞朝刊「歌壇」より

・戦争を知らぬ人らが毒ガスの造られし島でウサギとふれあう(三原市 岡田さん)
【馬場あき子評:第2首も広島の海に浮かぶ毒ガスの島が日本の戦力を担っていた日を思い、今の平穏な光景に感慨を寄せる】

→沖縄、グアム、サイパンなどもそうかも。戦争が無かったのなら、そういう地はのんびりとした、美しい自然を堪能できる場所だったのに、と思う。そして同じようなことは、自分の身近にもある。レイヤーのようにその地を覆う戦争の記憶に気づかされたとき、それは決して過去の、二度と起こらないことだと言い切れないということを感じてしまう。


・四十年の本屋のおばさん終えました今朝も見ている三段八割(宇都宮市 駒野さん)
佐佐木幸綱評:第一首、「三段八割」は新聞の朝刊一面の書籍広告。毎朝それによって本の置き場所や積み方を変えてきたのだ。四十年の日々が凝縮された一種】

→私が普段「お気に入り俳句」には入れないタイプの句。だから最初目を通したときは何の感想も浮かばなかった。しかし、選評を読んだとき、この句の持っている圧倒的な存在感を感じて、なんか忘れられなくなった。「三段八割」という業界用語と、それをちゃんと受け止め、句の奥深さをシロウト(=私)に感じさせた選者、その両方の力量に脱帽した。


・困ったなぁ黒のら猫が今日も来て兎の尻に気弱なパンチ(さいたま市 横山さん)
→謎すぎる句。兎って飼ってる兎? いつも猫パンチされるがままで逃げないの?なんで気弱なの?


・夜も更けて友が送ってくれる道きょうに限ってたぬき横切る(大阪府 岡野さん)
→この人は田舎の高校生で、友はちょっと気になる男子学生で、なんかもやんとしたええ雰囲気になったときに「たぬき」が通り、そこで話題はたぬき一色になってしまい、台無しになるという私の勝手な想像。