沖縄戦全記録

明日の用意をしなければならなかったのだが、どうしても見たかったNHKスペシャル沖縄戦 全記録」。
最初に、遺体が写るというテロップが流れた。目を覆うような凄惨な場面が何度も出てきた。米兵が遠くの村人とおぼしき人々に銃弾を浴びせ撃ち殺した瞬間を、死んでいるかどうか確かめるために足に容赦なく銃弾を撃ち込む様子を見た。


さらに衝撃だったのは、彼らは最初からこのような状態であったわけではなく、住民保護のため、糧食をたくさん準備しておかねば、などという話もしていたことである。それが、次第に避難住民と撤退していく軍が入り交じり、兵士と住民の区別が付かなくなって疑心暗鬼に、しまいにはパニックになってしまったという。精神に異常を来した兵士の様子も写っていた。


一方現地の日本軍は中央から持久戦を命ぜられたため住民を無理矢理徴兵し、徴兵しない住民も巻き込み、しまいには矢面に立たせ、甚大な被害をもたらした。住民の避難所を奪い、手榴弾を渡して自決を促した。補給もほとんどなかったというのは中国江南に展開した日本軍と様相を同じくする。


軍は住民を、国民を守らなかった。


さらに、このような非人道的な行為に及んだ人々の中には、最初からこのような残虐性を持ち合わせていた人なんてほとんどいなかっただろうと思う。しかし、ふつうの親、ふつうの子、ふつうの市民だったはずの人が、戦争という状況の下ではこのような行為をしてしまうのだと。


以上のことは、知識ではなんとなく知っていた。でも、実際の映像・音声で目の当たりにすると、ほんとうに言葉を失った。そして被害者も加害者も、70年たった現在に至るまでなお苦しみ続けているのだ。戦争は決して終わっていないのだと思った。


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この日付の朝日新聞朝刊「天声人語」に紹介されていた、いぜん連載していた「折々の歌」からの抜粋。
・ねこに来る賀状や猫のくすしより 久保より江
天声人語子評:「くすし」は医師。大正15年作というから、恵まれた猫だ)