「わたしを離さないで」


・ラジオでかかった歌でいちばん心に響いたのは意外にもアンパンマンのマーチだった。


・スーパーで募金箱を発見したので、とりあえずちょっとだけ募金をする。最初は金融機関経由の募金にしようかとおもっていたのだが、午前中に行った整形外科で見知らぬおばちゃんが言っていた「なんで手数料を銀行に払わなあかんねん」という言葉がこだまして、やっぱ募金箱探そう、と思ったのだった。


そのスーパーでは、ラーメンの棚がかなりがらがらになっていた。関西でもこうか…ちょっと恐い。



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わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)



読了はたぶん年末年始あたりだったと思う。カズオ・イシグロは初めて読んだのだが、私の知りうる限りの彼の生い立ちから、文化的衝突とかそういう方面の主題なのかなとか思っていたけど、読んだ直後の感想としては、まるでごく繊細で、きわめて感受性の強い女子高生が書いたような、という感じだった。特殊な施設内で暮らす少年少女たちの、ほんとうに細やかでささいな、微妙なことで揺れ動く人間関係、いやそんな直裁的なことばで示すより、空気というか雰囲気というか、そういうことが事細かに描写されている。


会話・言葉が前後のささいな出来事の「文脈」によって帯びるニュアンス、自分たちだけで一時期通じる内輪受け的な冗談、駆け引き・取引のように遠近が決定する友達との距離感、目配せやちいさな仕草によって暗示される抗議や訴え。それはある意味、小さな集団が長期間狭い環境に閉じこめられるなかで起こる、極端な空気の読み合いのような感じ。なんか、小学校から高校まで続いた、同一年代のものを数10人単位で1〜2年同じ集団に属させる「学級」というものの行き詰まる雰囲気に似てるなと思った。


しかも彼らは「学級」よりさらに狭い環境下にある。外部からは物理的にも心理的にも隔離されている。全員が特殊な運命を義務づけられたものたちで、そのことは隠蔽されているものの、圧倒的に少ない情報の中で彼らはそのことをうすぼんやりと分かっている。分かっているのに分かっていない、気づいていないふりをしている。あうんの呼吸で、やがて壊れることを運命づけられた脆い幻想を共犯的に作り上げている。


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ただし、この話はあらすじだけみると確かにSF?(なんかSF雑誌でこの本の紹介を見たような気がする)で、えげつない設定、肉体関係も含む行き詰まるような人間関係、そういう要素をつらねていくと、もっとホラー的な、あるいはもっとどろどろした話になりそうなんだけど、でもこの作品全体の雰囲気を支配するのは、なんというか、意外にも「透明感」なのだ。


やるせなさ、せつなさ、そういう郷愁じみた感情が、みな透き通って、淡くふわりととけていくような感じ。
なんなのだろう。これこそが作者の文体の力なのだろうか。




読み終わり、本棚に戻すためカバーを外すと、そこにはセピア色の懐かしいカセットの絵があった。
それを目にしただけで、胸をしめつけられるような気がした。


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きょうの夕食。ちと味が濃すぎたが、家のヒトには好評。
Cpicon ☆ツナで麻婆白菜☆ by みぃ。