自分のもっているもの
2010年7月15日付朝日新聞夕刊 人生の贈りもの
将棋九段 有吉道夫(74) 4
(前略)
初代実力名人の木村義雄先生(故人、十四世名人)は晩年、
「年配者は若者にないものを持っているはず。
自分はそれを生かす方法はないか考えている」
という趣旨のことをおっしゃっていました。
(後略)
***
私が二胡と出会ったのは20代も終わりかけのころでした。
もちろん、遅い人よりは早いですが、早い人よりは遅い(なんか変な言い方ですが)。
「二胡と出会うのがもうすこし早かったらなあ」、そんなことを思うことも多々あります。
最初の先生から、「あなたが高校生だったらよかったのに」なんて
いかんともしがたいことを言われたこともありました。
しかし、自分でどうにもできないことを嘆くより、
上記の木村名人のように、マイナス(やそう思えること)を
プラスにとらえること、あるいは、自分に与えられた条件でもって、
それをよりうまく生かしきる方向性を考えるほうがよいですよね。
また、二胡という楽器は、年配になってからはじめられた方もおおぜいいらっしゃいます。
50代はおろか、60代から、あるいは70代からでも、
初めての楽器にチャレンジするかただっていらっしゃるのです。
悠々自適に楽しんでらっしゃる方もいれば、やはり、若い方と比べて
なかなか上達しないことを悲しんでいらっしゃる方もいます。
特にこのくらいの年代の方(とりわけ女性の方)の中には、
親や配偶者の介護や世話、あるいは孫のおもりなど、
家族のために多くの時間をさかざるをえず、自分だけの時間をなかなかもてずに、
練習する時間もままならない、とお嘆きの方も多いのです。
そんな方にぜひ、このことばを思い出していただければ、と思いました。
もちろん、自分に対するエールでもありますが。