ATレッスン―8回目

この日のレッスンではピアノを見てもらった。
ピアノは高校以来ウン十年もやっていないのだが、必要に迫られて。


どしゃぶりのなか、自転車でレッスン場に向かっていると、
激しい雨が「さすべえ」にセットしたカサをすりぬけているのか、
白いTシャツが透け透けになっていることに気づき、愕然とする。
(なんでこの日にかぎって白を選んでしまったのか。アホな私)


現場には先生・ジムの方をはじめ、女性の方しかいないのだが、
さすがに恥ずかしく、途中でコンビニを見つけ、500円で雨カッパを買った。


***


今日は、いままでのK先生ではなく、S先生がレッスンしてくださった。


まずは、教室のキーボードで、自分が弾かなければならない曲の
うまくできない箇所をいくつか弾く。
そのあと、S先生の指摘で、これまでレッスンで学んできた姿勢のことを
まったく忘れていた自分に気づく。


(以下、うろ覚えの表現で書いているので、解剖学的に
正確な表現でないかもしれないことをあらかじめおことわりしておきます)


足で地面を支え、こぶしほどの太い背骨、それが脊椎につながり、
目の下くらいまで伸びていて、そこに頭蓋骨がふわりと乗ってる。


腹部には背骨以外の骨はないので、脇まわりの筋肉で支えている。


手は肩からではなく鎖骨が起点であり、動かす原動力は背中の方の筋肉を意識する。
その背中から尾てい骨までがすべてつながっていて、手先の動きを
背中全体でサポートするような感じ。


****


先生の言葉で上記のつながりを確認したあとに再度弾きはじめると、
特に、アクセントの瞬間に両脇をちぢめてしまうのと、その瞬間に
頭を深く沈める癖があることに気づいた。


また先生が私の手を取って前後左右に動かすと、なんかしんどい。
とくに腕のあたりが無駄に緊張している。
それと、私が、先生より先に先に自分で持っていこうとする癖があることも指摘された。


とはいえ、完全に脱力して、先生の持って行くがままに体を預ける、ということではなく、
一緒に動くように、とおっしゃった。これがなかなか難しい。


先に持って行かないようにするためには、つい、まったく意識しないようにしてしまうのだが、
実際に自分が動かして何かをするには、意識を消すわけにはいかないからだ。


***


また、オクターブの移動がうまくいかない、という点については、
まず、背中からの動きの中心は小指側につながる、ということを再認識する。


つまり、前腕の骨は2本あって、1本を軸に、もう一本がそれにクロスする形で
手のひらを回転させるのだが、軸になるのは、小指側の骨なのだ。


しかし、実際にオクターブを弾くときは、親指側を基点にして、
そこから小指を開くようにしていた。まずそのへんから矯正する。


先生のアドバイスは、すこし手のひらの角度を変えて、
小指をやや鍵盤の奥の方まで持って行き、
両手全体が円を描くようなポジション取りをしてはどうか、ということだった。


慣れないので鍵盤がひっかかる感じがするが、小指中心の意識はとても保ちやすい。
しばらくはそれで練習してみることにする。


けっきょく、いぜんパソコンの打ち方をここでK先生に見てもらった時に
同じようなことを指摘されたことを思い出した。てのひらだけを持って行こうとするから
腕と指の関係がねじれてしまうのである(下手やけど下図参照)。


ピアノもパソコンも、同じ体の動かしかたの癖がついているということなんだなあ…


***


それと補足的なこととして、親指は押すという動作に慣れているが、
小指はそうではない、ということも指摘された。


つまり、親指は他の指と正対してるから、他の指をおさえるようにして
その間に何かをつまんだり挟んだりという動作が多い。
鍵盤を押すという動作も似たようなところがある。


しかし、小指はそうではない。ボタンを小指で押したりしないし、
確かに日常生活ではほぼそのような動作をすることはない。


鍵盤を押さえるという動作が、いかに、小指にとって
未経験なことなのか、ということだった。


***


本番はグランドピアノを弾く。しかし、普段はキーボードくらいしか
練習の手段はない。それも、職場にあるやつで、自宅にはそれすらない。
だから、鍵盤のタッチが全く異なることに対する不安感が強かった


でも、先生のレッスンを通じて、その違いに不安がるより、
キーボードでいいからまずは正確な体の使い方から始めよう、そして、
タッチは違えど、同じような体の使い方がグランドでもできるようにするというのを
目標にがんばろう、と前向きに考えられるようにした。