煮たり焼いたり

2010年1月6日朝日新聞 わがまちの繁盛店
 煮たり焼いたり(大阪市中央区
 厳選素材と人柄じっくり


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数年前に知人から紹介されて、ここの店に初めて行ったのは、私の誕生日だった。
ふだんシャツとジーンズの私が、着慣れないスカートとパンプスで
仕事帰りに主人と待ち合わせて、その店に行った。



ラブホもまじるネオンのなかで、まるで隠れ家のようにひっそりとそのレストランは有った。
手違いでちょっと予約の連絡がいきちがってしまい、私達が店の前をうろうろしていると、
店主の方が前カゴに食材を満載した自転車をききき〜と止めたので、話しかけたら、
びっくりしはった。


お互い、連絡の行き違いをあやまり、だれもいない店内に入った。
いすをおろしたり、かなりあわてた様子で身支度をととのえはったあと、
希望を聞いて、それからさっそく、腕をふるい始めた女主人。


奥のソファーでくつろいでいるうちに、ひとつ、またひとつと
料理が運ばれてくる。まるで、友達の家に呼ばれて、食事をふるまわれているように。


そのうち、他のお客さんもすこしずつ入り始め、すぐカウンターがいっぱいになる。
私達の席はすこし奥まっていて、みせの少し賑わいだ雰囲気にひたりつつ、
でも、自分たちの空間はたもてて、そのバランスが心地よかった。


あとで、女友達もさそって、もう一度この店に行った。
そのときも、いろいろな料理とお酒を堪能し、しかも値段はリーズナブルで
嬉しかったなあ…。



記事を読みながら、そんな昔のことをおもいだした。
女主人さんを、朝日の記者さんは「松下由樹広末涼子を足して2で割ったような」
と形容していて、そのたとえの妙に、思わず笑いがこみ上げる。


また、のんびり&ちょっとあわてんぼさんらしき店主さんの人柄からは
まったくうかがえなかったけど、でも、ほんとうにいろいろな苦労をなさって、
ここまでたどり着きはったんや、ということを知り、いっけん、ほほえましい
キャラクターの内に、意志の強さを秘めてらっしゃったんだなあと、しんみりした。



もう数年来、行ってないけど、またいつか、あの味と雰囲気を味わいに
再訪してみたいなあと思った。


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